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黒髪美少女明日香 (12)エリの心配

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黒髪美少女明日香 (12)エリの心配

「ちょっと、こっちに…」
覚悟を決めたつもりだったが、その時の落ち込みぶりは丸わかりだったと思う。エリ先生もそんなオレに気を使ってるのか、気の毒そうにオレを廊下の反対側に誘った。

「あのね、木村君…」
いつも笑顔を絶やさないエリ先生の表情がいつになく暗かった。
「はい…」
エリ先生にあのことを告げられるのは情けなかったが、その表情はオレを心配してくれてるようでちょっと嬉しくもあった。

「…、はっきり言うわ」
気弱そうだったエリ先生は、思いつめたように表情を引き締めるとオレを見つめた。
「はっ、はい…」
整った顔が真剣にオレを見ている。死刑宣告される犯罪者はこんな心境なのか、とオレは泣きそうなるのをガマンして次の言葉を待った。

「こないだの試験、木村君だけ赤点だったの…、追試受けてくれないと進級できなくなるから」
意を決したように出席簿を持つ手をギュッと握ったエリ先生は、しかし申し訳なさそうにオレを見た。
「は?…」
全く想定外のセリフにオレは真顔で聞き返していた。

「ごめんね、先生の教え方が悪かったんでしょ、木村君、いつもいい点取ってたし…」
あっけにとられて聞き返すオレに、エリ先生はますます恐縮して謝りだした。

「あ、あの…、わかりました、あのときは熱があって体調が悪かっただけなんです、追試がんばりますから」
とりあえず悪事がバレてないとわかったオレは、しょげかえったエリ先生がかわいそうになって懸命にフォローした。

「そう…、そうだったの、そうよね、木村君、いつも真面目に授業受けてくれてるし…、追試、がんばってね」
オレの説明に納得したのか、エリ先生はいつもの笑顔になって去っていた。

エリ先生の英語で悪い点を取りたくなくて試験はがんばってるのは事実だ。

でも授業を真面目に聞いているというよりエリ先生に見とれてるだけなので、オレが真面目に授業を受けていると信じているエリ先生になんだか申し訳ない気持ちにもなった。

黒髪美少女明日香 (13)につづく
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